サクラ

「……これ、あげる」

遥菜が差し出したのは、チョコレートだった。

「え?」


遥菜は俯いて言った。


「ほら、今年のバレンタイン、入試前だったじゃん?」


「あ、あぁ」


「だから、一か月延期してたの。あげる」


遥菜は顔を上げて、はにかんだ笑顔を見せた。


「ありがとう」


鼓動がいっきに速まる。



この気持ちを悟られないように、僕はもらったチョコレートを、無造作に学ランのポケットに入れた。