引っ越しの準備を始めて、3日がたつ。
今日は仕事の無い楓が手伝いに来てくれていた。
楓も、この事実には驚いていたが、納得してくれたのでよかった。

「まさか綾が引っ越しねー…。」
「するつもりはなかったんだけど、仕方ないしね。」
「もしかして、ここ、出るんじゃないの?それが分かったから…。」

楓の言っている意味がだんだんと分かってきた私はぞっとする。
にやり、と楓の顔が笑った。
この顔は…。

「馬鹿!!!。引っ越しするとはいえ、まだ数日住むんだからやめてよっ!!。」
「はいはい。可愛い反応しなくてもいいでしょ?。」

楓には本棚の本を段ボールに入れてもらっていた。
口が動く割には仕事はこなしていく。
なんてキャリアウーマン。
引っ越し業者への連絡はすんだ。
後は電気とガスと…あ、最後のお家賃って、どうなるんだろう。

確認することは山のようにある。

しかし、この部屋から出ることは私も少し悔んでいた。
2年もこの部屋に住んで、いくらか愛着があったからだ。
それにお隣さんだって、大家さんだってみんないい人で、みんなと離れたくなかった。
…小学生みたいな発想だと、自分で苦笑できるけど。