その話を聞いた時には、私は泣いていた。
「…ちょっとしか仲良くできなかったけど、すっごく頼もしかったわ。話聞いてくれてありがとうね。」
香奈さんが家へと帰る。
その見送りに私はマンションの前に居た。
「香奈さんこそ、今度は二人で飲みません?。」
「いいわね!今度は私が綾ちゃんと浮気しちゃうわ。」
にこやかな笑顔を見せて去っていく。
「じゃぁね。」と片手を振って帰って行った。
そんな香奈さんが綺麗に見えた。
見えなくなった背中を確認してから、自分の部屋へと戻る。
エレベーターの中は静かだった。
もう夜も遅い時間になって来ている。
九時半か…。もうご飯も食べてる時間なのに。
でも、あんなにきれいな香奈さんの笑顔を見れたら、もう十分。
そんな風に私も笑っていられたら、幸せだろうな。
自分の部屋のある階へエレベーターがつくと、ポーンと音が鳴る。
扉が開いた先には、壁に寄り掛かる樹さんがいた。
