その時、翔さんの家のインターホンが鳴った。

「…誰。」

そう呟いて立ち上がると、玄関へ向かった。
私はここに居ていいのかなと、おろおろしていた。

とりあえず荷物はまとめておこう、と立ち上がってドアの近くにあった荷物に手を伸ばした時だった。

「…ご近所さん、お前んとこ?。」

先ほどの怖い声が驚くほど爽やかに聞こえた。

「居るけど…何。」
「…話したいんだけど。」

樹さんが、私に話…?。
さっきのことで、また私怒られてしまうの…?。
怖くて肩が震えた。先ほどのまっすぐな目が私を見つめている気がして。
その時、翔さんは言った。

「…あんな風に怒鳴っておいて、おいそれと彼女を出すとでも思った?。」
「…それは…。」

翔さんの怒ったような鋭い声。
私のことをかばってくれるまっすぐな声。

「…俺たちはいい。俺と聖はお前の昔を少なくとも知ってるから。…でも彼女は違うだろ!?。つい最近来たばっかりだろ…?。」
「…。」
「そんな奴にまで、八つ当たりするほどお前は見境ないとは思ってなかったよ。」

翔さんの声が響く。
そんな風に言ってしまったら、樹さんと翔さんが…。
私がいるせいで、二人の関係が壊れてしまうかもしれない。
そんなのは嫌だ。
あの日にみた三人の笑顔はすごくすごく暖かかった。
でも、そんな笑顔が壊れてしまうのはいやだった。

そう考えたら、もう体は動いていた。