それは樹さんへの愛の大きさだった。
樹さんが香奈さんに別れ話を切り出された時、それはすごかったらしい。
飲めない酒を飲んで、香奈さんを困らせ、そんな自分を放っていけるのか?と香奈さんに問いかけ続けていた。
もちろんそれは聖くんや翔さんにも例外ではなかった。
ただの別れですんでくれればよかったのに。
樹さんが、香奈さんの婚約を知ってしまえば、それはすごいものになった。
俺のどこが悪かったんだよ。
俺はあいつに何かしたのかよ。
頼む、香奈。俺にはお前しかいないんだ。
翔さんと聖君の手助けで、前のような友人関係に戻ることはできた。
それでも香奈さんには婚約した相手がいて。
どれだけ樹さんが香奈さんを想っても、届かなかった。
香奈さんと別れて半年がたち、香奈さんを想って何かしてしまうことは減った。
でも、どこかで樹さんは香奈さんを忘れられないという。
「だからあいつは、きっと君にも過剰反応したんじゃないのかな。」
「…そうなんですか…。って…え?。」
過剰反応って…私がなんで樹さんにそういう態度をとられたことを知ってるの?
「廊下であれだけ大きな声で怒鳴りゃぁ聞こえるし、それにドアだって完全に閉まってるわけじゃなかったよ?。君のその大きな袋のせいでね?。」
私の買い物袋を指さして笑う。
彼はなんでもお見通しらしい。
あははと苦笑してしまうしかないくらいだ。
