初めて気付いた瞬間

ふと翔さんが私を見る。
どうしてだろう、何故か落ちついてしまう。

ただの隣人のはずなのに。
つい先日あったばかりなのに。

「…それに、今の俺なら、君が何に悩んでるか、分かるし。」
「え？。」

私が驚いた顔で翔さんを見ると、翔さんは材料から目を離して言った。

「君、香奈に会ったんでしょ？…樹とのことでも聞いた？。」
「…どうして翔さんがそれを…。」

私がそう言葉を漏らすと「ご飯は後にしよう。」と言って手を引いてリビングへと通された。
ゆっくりと翔さんが腰を下ろす。
私にも座れと促されて座った。

「…香奈のことは、俺も聖も知ってる。」
「どうして…ですか？。」
「…あいつは、お前の部屋に住んでたんだよ。」

新たな真実だった。
そんなに傍に香奈さんは居た。

「…付き合ってたってのは知ってたけど、別にかまいやしなかったし、聖も俺も、樹と香奈はお似合いだなって想ってたから。別に何にも思わなかった。」

翔さんはそういって顔をうつ向かせた。
きっと別れてしまった理由を探しているんだろうか。

「…あいつが樹と別れてすぐだった。あの部屋から出て行ったの。樹はもう手がつけられないくらいだった。でも、半年もたってあいつも変わったと思ってた。」
「…変わった…？。」

翔さんが目を見て言う。「君は知らないんだった。」と頭をかいて話してくれた。