初めて気付いた瞬間

追い出された私は呆然としていた。

何してるんだろう、私。



早く部屋に入って、支度をしなくちゃ。
そう、ご飯を作らなきゃ。

そう思うのに、足は動かない。

香奈さんを助けたい。
樹さんも助けたい。

でも
二人の溝は深すぎて、私が入ってはいけなかった。

樹さんには香奈さんが大切すぎた。

何より怖かった。

香奈さんが、傍にいないあの人は、あんなにも怖くて。

【…よろしくね。】

優しいまなざしで、私に右手を差し伸べてくれたあの人とは違う気がして。
ごめんなさい。香奈さん。

私はあなたの力になってあげられないのかもしれない。