「…ありがとう。」
私のマンションまで送ってくれた香奈さんは涙に赤く腫れた目をこすりながら言った。
「いいんです。…それよりも、ここに居ていいんですか?。」
「…ごめんね…。」
香奈さんの気持ちは痛いほどわかっていた。
「私のほうこそ、香奈さんに時間をとらせてしまったみたいで…すいません。」
「いいの。お礼だと思って受け取って?。」
今日最後の笑顔を見せて、香奈さんは元来た道を帰って行った。
部屋へと帰るエレベーターの中で、携帯に光る新しいアドレス。
安藤香奈という名前。
樹さんの思い人。
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