「…え…?。」
樹さんにこんなきれいな彼女さん?
別に違和感があるわけじゃなかった。
綺麗な顔立ちをした樹さんにはお似合いの女性だと思う。
でも、この関係は少し違和感を感じてしまうのもわかると思う。
女性は赤く腫れた目を抱えて樹さんの胸に飛び込んでいく。
そんな彼女を樹さんは…
歪んだ顔で、せつなそうに、苦しそうに見ていたから。
「…香奈。ご近所さん。いるから。」
「…え?。」
香奈、と呼ばれた女性は泣きながら私のほうを見る。
どうしよう…この現状で私は絶対邪魔だろう!?
どうしようもなくなって、とっさにエレベーターに乗ろうと思ったが時すでに遅し。
エレベーターは下の階へと落っこちて行った。
「…あ…なんか…すいません…。」
「いいの。」
香奈さんが口を開いた。
赤く腫れた目を擦って私の向き直る。
「私の名前は、安藤香奈。樹の古い友達なの。あなたは?。」
「あ、私は藤崎綾です。…樹さんの向かい側の部屋に住んでいて…。」
言葉が濁っていく。
こっちを向いている香奈さんには分からないのだろう。
樹さんがもう、苦しそうな顔を浮かべていることには。
