某所

「こんにちわー…。」

大家さんに教えられ、来週から引っ越す私のアパートに顔を出した。
大家さんのお友達と聞いて、安心して部屋をノックする。

「はいはいー。」

中から聞こえた穏やかな女性の声に心が落ち着く。
ガチャッと音がして扉が開く。

「あ、あの!今度引っ越してきます…篠崎といいますが…。」
「あ!篠崎綾ちゃん?。話は聞いてるよ!さぁ、上がって上がって。」

部屋の中へと促され、私は中へと足を踏み入れた。

中には白を基調とした穏やかなイメージの部屋だった。
ほんのりとラベンダーの香りがしてほっとする。

「散らかってるけど、ごめんね。今書類持ってくる。」

そう笑いながら声をかけてくれた新しい大家さんは、紅茶をトレーの上に載せて言った。

「いえ!あの、どうぞお構いなく…。」

そんな私の声は届かず、せわしなくいろんなところから書類を持って来始める。
私はそんな様子を見て、ここではうまくやっていけるかも。と根拠の無い自信がこみあげていた。