「ねぇ、アキ!今晩、泊めて!」



レイナさんは突然、大声でそう言った。


レイナさんの突然の大声で私の体はビクンと揺れる。



「何で?」



でも聖夜さんは驚きもせず、静かな口調でそう聞いた。



「何でって、怖いじゃん。まだ犯人があの公園辺りにいると思うとさぁ……」



犯人は、公園なんかにいないよ。


犯人は……。


私は聖夜さんをチラッと見た。



「もう、犯人はいないよ……」


「アキに何でそんなことがわかるのよ!」


「だって、犯人は捕まってないんだよ?もし、まだ公園の辺りにいたら捕まってるはずでしょ?」


「あ、そっか……」



さっきまでの勢いとは違って、気の抜けたような返事をするレイナさん。




「ねぇ、レイナ?もしキミが人を殺したとして捕まりたくなかったら、どうする?」


「えっ?な、何?いきなり……」


「例えばの話だよ」


「そりゃあ、遠くに逃げるでしょ」


「そうだね。僕もレイナと答えは同じ。だから公園で起こった殺人事件の犯人も逃げてるってこと」


「うん……」


「大丈夫だから、今日はもう帰った方がいい。もし何かあったら連絡してくれても構わないし」


「うん……。わかった」



レイナさんはそう言って立ち上がると、荷物を手に持った。



「雪乃ちゃん、バイバイ。またね」



私に笑顔で挨拶するレイナさん。


私もレイナさんに笑顔を見せて、頭を下げた。


レイナさんは、玄関まで聖夜さんに見送られ、帰って行った。