私を連れ出す前に、レイナさんは救急車を呼んだ。



「アキ?救急車、呼んだからね」


「…………うん。僕は大丈夫だから早く行きなよ」


「うん……」


「あ、レイナ?ちょっといい?」


「ん?」



聖夜さんに呼ばれたレイナさんは、聖夜さんの側に行き、その場にしゃがみ込んだ。


聖夜さんはレイナさんに顔を近付けて、何か言ってる。


けど、何を言ったのか私には何も聞こえなかった。



「わかった」



レイナさんはそう言ってその場から立ち上がり、私の側に来た。



「雪乃ちゃん、行こう?」


「…………はい」



私は玄関で靴を履いた。


聖夜さんを見る。


目を閉じて、もう、こちらを見ようとしない。


レイナさんが私の手を出しギュッと握った。


レイナさんを見る。


ーー大丈夫。


そう言ってるかのように、私を見るレイナさん。


レイナさんが玄関を開けた。


ここから一歩踏み出したら……。


もう、聖夜さんとの関係は終わってしまう。


私は深呼吸をした。


そして……。


約半月振りに外に出た。


ーーバタン


玄関が閉まる音がして、私と聖夜さんの長いようで短かった秘密の時間は終わった……。


涙をポロポロと流す私の手をレイナさんは、更にギュッと強く握りしめてくれた。


聖夜さん……さようなら……。


聖夜さん……。


好きだったよ……。