「ねぇ、雪乃?」
「はい……」
「昨日、なぜ逃げなかったの?」
「えっ?」
聖夜さんの質問に思わず声が出てしまった。
もしかして、私が逃げてもいいと思ってたの?
だから鍵もかけず、レイナさんに頼むこともしないで出て行ったの?
「逃げようと思えば逃げれたのに。チャンスだったのにね……」
そう言った聖夜さんの顔は少し寂しそうだった。
「わからない……」
私はそう言って首を左右に振った。
でも本当は、わかっていた。
私には、もう逃げようとする意思がなかったから。
聖夜さんが犯罪者でも構わない。
ずっと側にいたい。
そんな思いがあったから……。



