「…………やめろっ!」



聖夜さんが声を荒げ、私の手を振りほどいた。


その反動で私の体は後ろに倒れ、ゲホゲホと咳き込んだ。


体を起こして、聖夜さんを見る。


聖夜さんは自分の両手をジッと見ていた。


その手は微かに震えていた。



「聖夜、さん?」



聖夜さんに声をかけるも、何も答えてくれない。



「ゴメン……ちょっと出て来る……」



聖夜さんはそう言って、立ち上がると、フラフラした足取りで部屋を出て行った。


ーーバタン


玄関の閉まる音が響く。


鍵もかけず、見張りを置かずに出て行った聖夜さん。


逃げるチャンスかもしれない。


だけど、私の体は固まったように動かなかった。