「でもね、彼が奥さんと子供と一緒にいるところを見ちゃったんだよね。モデルみたいな綺麗な奥さんで、彼が小さい子供を抱っこして、3人で笑い合って……」



レイナさんの元気のない笑いはこれが原因だったのかな……。



「奥さんがいることなんて、わかってたけどさ。実際に見たら、ね……」


「そうですね……」



私は既婚者と付き合ったことがないので、何とも言えないけど。


でも、もし聖夜さんが違う女性と歩いてるのを見てしまったら……。


私もレイナさんと同じ気持ちになるかもしれない。



「あぁ、私の入る余地なんてないなと思って。奥さんと子供を悲しませることしたらダメだなって……。でもね、彼のことが好きな気持ちは変わらないんだ……。だから叶わない恋愛してるの」



叶わない恋愛。


その言葉に私の胸はキューと苦しくなった。


レイナさんの気持ちがわかるから。



「あ、ゴメンね。変な話して……」



レイナさんはそう言ってクスッと笑った。



「いえ……」


「体調、悪いのにね。少し眠ったら?私、まだここにいるし」


「はい……」



私はレイナさんの言葉に甘えるように、ゆっくり目を閉じた。


そのまま私の意識は遠のいていった。