まだ家に帰ってない兄さん。


兄さんが遅いのもいつものこと。


理由は私と同じ。


兄さんもまた、女の人を抱く。


まあ、そんなわけで私たちの生活費は足りているわけで。





私はシングルベッドの中で兄さんの帰りを待っている。


しばらくすればガチャっと古びたアパートのドアが開く。


足音はこのシングルベッドにどんどん近づいて、そして布団が剥がされる。


『待たせたな』

「遅いよ兄さん」


こうして偽りでない笑顔を向けるのは兄さんだけ。


兄さんもまた優しく微笑み、布団の中に足を滑らす。


一気に窮屈になるシングルベッド。


そして一気に暖かくなるシングルベッド。


この温もりだけは異常なくらい好き。


「やっぱり兄さんの温もりだけは好きだな…」


そう言って目を閉じ眠りにつく。


高校生の男と女が2人、ベッドの中で普通に寝るなんて私たちくらいしかいないだろう。