(早く逃げて!)
(お前たちは生き延びるんだ!)


まだ母さんと父さんのヒステリックな声が耳にこびりついている。


(翔…芽衣のこと…頼んだわよ…)
(大人になるまで守ることができなくて…すまない)


窓から逃げ出す時に聞こえた2人の声。


(父さんも母さんも早く逃げろ!)


2人に差し出そうとした手は、上から落ちてきた焼けた木材によって遮られた。


(うわぁあああ!)


手が熱い。


さらに落ちてくる焼けた木材をよけることしかできない。


母さんと父さんを助けることができず、そのまま家を出るしかなかった。


門の前では泣きじゃくっている妹。


そして今にも燃え盛る家に飛び込もうとしている。


芽衣のこと頼んだわよ--------------


その言葉を思い出し、飛び込もうとする妹を抑える。


妹は何も出来ない自分が悔しいのか、俺の服にしがみつきながら大粒の涙をこぼす。


その姿を見てある決心をした。


俺がこいつを絶対に守る…と。