「本当にありがとうございました。」




「ああ。」




麻衣の家の前まで送ってもらった私は、深々と渡邉さんに頭を下げた。




「これ。」




車のドアを閉めようとした私に、さっき渡した千円と一枚の名刺を渡邉さんに渡された。




「何かあったら、ここに連絡しろ。」








この人は、なんでこんなに優しいんだろう。




「ありがとうございます。でもこの千円は『これで、子供に旨いもん食べさせてやれ。』





・・・ずるい。




なんでそんな優しい顔するんですか?




そんな顔されたらもう言い返すことなんてできない。




「・・・・・はい。本当に今日は色々とありがとうございました。」




「俺も、今日は助かった。じゃあな。」




そういうと、車は発車した。






長年隠していた思いが、動き出した気がした。