「あたし、もう行くね」
お母さんの作ってくれたお弁当をスクバに入れ、音を立ててチャックを閉める。
お母さんはキッチンから首だけをあたしに向け、行ってらっしゃいと笑顔で言う。
お父さんは、コーヒーの入ったカップを片手に、新聞に視線を落としながら軽く頷く。
リビングから出るドアノブに手を掛けた。
・・・そのまま出ようと、思っていたのだけれど。
「・・・そうだ。凌(リョウ)も、そろそろ出るんでしょ?たまにはあなた達、一緒に行ってみたらいいじゃない。駅までは一緒なんだし」
・・・イジメ?って思うくらい、悪気も無くさらっと言うお母さん。
いや、本当に悪気は無いのだけれど。
あたしは、無言で固まってしまう。
