走れども走れども、景色は同じで一向に目的の出口は見えない。

それでも立ち止まる事なく女は大粒の汗を流し、傷を負っているにも関わらず動かし過ぎた所為で鉛のように重くなった足を引き摺りながら、無我夢中で逃げる。

咽喉の奥が血の味がしようとも。

心臓の鼓動が激しく打とうとも。

安全な場所に辿り着くまでは、足を動かし続けた。

暫くして密林を抜けると、視線の先に見覚えのある古い吊り橋を見付けた女の顔には安堵の表情が浮かぶ。

吊り橋を駆けると不安定に上下するが、禁止されている筈のその行為を咎める者は今は誰一人として存在しない。

吊り橋を渡り終えて、そこで漸く女は走る事をやめた。


「はぁ……はぁ……はぁ…ッ……」


荒い息遣いのまま後へと振り向き、持っている懐中電灯で吊り橋を照らすが何者の気配も、もう感じなかった。

耳を澄ましても吊り橋を渡る独特の音は聞こえてこない。