かっ、和也っ!?


その声の主に気付いた俺は、慌てて安以から体を離し。

キスの事を悟られまいと、2.3歩ベッドから後ずさった。


「あれっ、いねぇの?真人っ」


先生が出て行ってすぐに鍵を掛けておかなかった事を、今更ながらに後悔しつつ。

とりあえず、和也がここに来ない事をひたすら祈っていた。


だけど、そんな俺の願いも虚しく。

和也は、このベッドへと足を運んで来てしまったんだ。


「あれっ、真吾?って、桜庭さんもっ?2人とも授業戻らずに何してた……」


キョトンと、驚いた顔を見せていた和也だったけれど。


次の瞬間には、何やら思いついたらしく。

ニヤリと口角を上げて、俺達の顔を交互に見てきた。


「そっかぁ、何か邪魔して悪かったな」


そう言って俺の肩をバンバンッと叩くと、アイツは笑いながら保健室を出て行ってしまった。


「何だったんでしょうね……?」


和也の後ろ姿を見送りながら、安以がそう尋ねてくる。

和也が変な誤解をしている事に、きっと彼女は気付いていないんだろう。


「さぁ……」


さっきまでより一段と速くなっていた鼓動を感じつつ、俺もそうとぼけてみた。


結局、いいムードに水を差された感じになり。

彼女を保健室に残して、俺も一旦教室に戻る事にした。


和也の奴、後で一発殴っておかなきゃな。