天使のような笑顔で

目を覚ましたらって言われても、気を失ってる彼女をこのままにしてていいんだろうか?


ぴくりとも動かなくなってしまった彼女を見ていると、急に不安に襲われてきて。


もし、このまま彼女が目を覚まさなかったら……?


そんな訳無いって、分かっているのに。

この瞼が一生開かないんじゃないか、って思えてくる。


「安以……?」


小さな声で、そう呼んでみたけれど。

返事も無ければ、ぴくりとも動かない。


「安以」


今度は、さっきより声を大きくしてみる。

反応を確認するけれど、何も変わりは無い。


天使みたいな彼女に付けられた、いくつもの痛々しい傷跡。

それを見ているだけで、どうしようもなく胸が痛くなってくる。


どうしたら…許してくれるだろうか?

こんな目に遭わせてしまった俺を、安以はまだ親友だと思ってくれるんだろうか?


もし、目が覚めた彼女が俺を拒絶したら?

俺を恨んでいるんだとしたら?


やりきれない想いに、胸が押し潰されそうになる。


頭を抱え、涙を堪えていた俺の視界に。

彼女の…綺麗な唇が、入ってきた。


このまま嫌われてしまうんだとしたら……。


気がつくと、俺は椅子から立ち上がっていた。