「原因は、お前らしいけど?」


消毒液とガーゼを手にしながら振り返った先生は、意味ありげに俺を見てくる。


正直、その言葉にドキッとしていた。


もしかして、俺が避けてたから悩んでたとか?


「彼女は…何て?」


そう問いかけてから、俺は慌てて彼女へと視線を向けた。


だけど、どうやら眠ってしまったようで。

瞼を完全に閉じて、じっと横たわっている。


「その前に、お前の言い分を聞いといてやろうかな?」


両手に手当道具を握りしめ、先生は戻って来た。

近くにあったパイプ椅子を足で引き寄せると、彼女の枕元のそばに腰を下ろす。


「俺の……?」


だけど俺は、イマイチ意味が分からずにそう訊き返していた。

そして同じようにパイプ椅子を探し、先生の隣に腰を並べる。


「訳があるんだろ?彼女を避けなきゃいけなかった」


ピンセットで摘まんだ綿に、消毒液を染み込ませながら。

俺の顔を見る事無く、そう問いかけてきた。


つくづく、この人には勝てないって実感させられる。


嫌いなはずなのに。

安以とあんな事をしていた先生を、嫌いになったはずなのに。


何でこの人は…俺の事をよく分かってくれているんだろうか。