理科準備室の甘い秘め事

窓が見えなくなった瞬間。

ぐいっと腕を引っ張られ、今度はそっと優しく包み込むように、抱きしめられる。


「俺、授業中はもちろん、たまに生徒に話し掛けられたとしても、無愛想だろう?だから、生徒からの評判悪いのは知っていた。でも、生徒からどう思われていようが、別にどうでもいいって思っていたから、気にしていなかった。授業さえちゃんと受けてくれればいい、そう思っていた」


永井先生は静かに話し出す。


「ココの窓からグラウンドが見えるだろう?」


私は永井先生の腕の中で頷く。


「仕事の合間、ボーッと外を見ていたりしていたんだ。たまたま外を見ていた時、マラソン中、よくこけている子がいたんだ。最初は“何やってんだか……”って呆れて見ていた。でも、気が付いたら、毎回、こけて足を擦りむいても、必死に頑張って走っている、その子から目が離せなくなっていたんだ」