「水無月先生!」
患者の容態がとりあえず収まって親族の元へ行こうとすると神前が反対側から歩いてきた。
子供を抱っこしながら。
「その子は?」
「急患の後藤さんのお子さんのカナちゃんです。
泣いてるのを慰めてたら寝ちゃって…」
女の子は神前の腕の中で静かに寝息をたてている
「…可愛いな。」
「!…そうですね…
お母さんは今飲み物を買いに行かれています。」
神前とカナちゃんを連れ俺は待合室へと向かった
「後藤…小枝子
<ゴトウ サエコ>さん…ですよね?」
「はい…あの、主人はどうなりましたか…?」
「今は落ち着いていますよ、命に別状はありません。」
小枝子さんはヘタヘタとその場に座り込んでしまった。
「後藤さん!?どうされましたか!?」
「す、すいませっ―…
気が抜けたら腰まで抜けてきちゃって…」
彼女はそう言いながら
大粒の涙が右目から零れ落ちた。
…すると神前がだきかかえていたカナちゃんを自分の方へと引き寄せた。
「神前…先生…?
カナの事ありがとうございました…
水無月先生も…
主人の事よろしくお願いします…。」
小枝子さんは涙を手で拭うと立ち上がってお辞儀をして帰って行った。

