相手の微かな笑い声が聞こえ、
 「裕子、マイクだよ。サンフランシスコから掛けているんだ」
 「-----」
 彼女は混乱している自分を取り戻そうと必死で抗う自分自身と葛藤していた。
 「裕子、聞こえている」
 「えっ、ええ」
「驚かして悪かったね。早く知らせたくて、詳しいことは手紙に書いたけど、和歌山に住めることになった」
 「和歌山に-----」
 「そう、結婚してくれるね」
 「-----」
裕子は茫然自失になっていた。
 「裕子!」
 「-----」
 裕子は答えが見つけられず、ただ溢れる涙を止めることが出来ずにいた。
 「裕子、どうして泣くんだ。答えてくれ!」
 マイクの声が一段と大きくなった。
 「マイク-----、あまりに-----」
 裕子は辛うじて言葉を発したが、彼の声が彼女の中を空転していた。
 マイクが去ってからの日々、裕子は追われるように時間を過ごし、彼女の中で対峙している恋慕との葛藤を続けてきた。
 今、彼女は緊張から解き放たれたような脱力感で言葉を発することが出来ずにいた
 「裕子、もう誰か好きな人が出来たんだね」
 「違う、違うわマイク」
 「いや、いいんだ。僕は-----」
 裕子は焦っていた。