マイクとトムに譲り、例年にない盛況であった。
パーテイ―の閉会で流された「蛍の光」に女性の多くが涙を隠さず、会場出口ではマイクが生徒一人一人と握手を交わし、女性には頬にキスを贈った。
 裕子は四人の外国人講師達に挨拶をした後、英会話スクールから持参した備品を紙袋に詰めた。
会場はパーティーの後片付けをするホテルのスタッフが慌しく動き回り、彼女は担当チーフにだけ礼を言ってから部屋を出た。
 「待っていたよ」
 マイクがダスターコートのポケットに両手を入れて立っていた。
 裕子が黙って頷くと、 
 「二人だけのクリスマスをしたくて待っていた」
 マイクはそう言ってから裕子の抱えている荷物を持ってエレベーターに向かった。
 二人がホテルの玄関を出ると、道路を挟んで向い側にライトアップされた和歌山城が冬の透き通った夜空の中で、白と黒の端正なコントラストを見せていた。
 「裕子、僕のマンションに行こう」
 裕子が頷くと、マイクは手を上げタクシーを止めた。
 マイクの契約は二十日までとなっていたが、実際には休暇を一週間取っていたので、明日から英会話スクールに来る必要はなかった。
マンションに到着するまでの間、マイクは裕子の手を離さず、時々強く握り締めてきた。 
が、その横顔は恋人と二人で過ごすクリスマスの嬉々としたものではなく、愁いを帯びていた。
裕子はマンションの前で、母親に二次会で遅くなるから心配しないように電話を入れた。
部屋に入ると、テーブルにワインがセットされ、赤いリボンで飾られた小さな包みが置かれていた。
裕子がテーブルの前に座ると、マイクはワインオープナーで手際よくコルク栓を抜いて二つのグラスに注いだ。
「裕子、------」
とグラスを持って、マイクは何か言おうと