終日の緊張から解き放たれ自室のベッドに横たわった時、裕子はマイクを求め愛慕の涙を流した。
 「マイク、あなたと離れたくない」
 繰り返しながら彼女は眠りの世界に引き込まれていった。
 師走に入り新任の外国人講師のトムが着任した。
彼は既に大阪本部で研修を終え、マイクの授業にオブザーバーとして参加した。
 トムは金髪に透き通るようなブルーグレーの瞳、長身で二十五歳の独身となると女性達の憧れの存在になるまで時間が掛からなかった。
 マイクが帰国することに、あれほどショックを受けていた生徒達の気持ちの変化は至って早く、裕子はその変貌に驚いていた。
同時にマイクと裕子の噂は引き潮の如く消えていった。
 裕子は今年のクリスマスパーティーは例年とは違い、マイクとトムの歓送迎会を含めたものを企画した。
 彼女がクリスマスパーティーの案内を掲示しツリーを飾っていると、マイクが後ろから一番大きな星を頂上につけてくれた。
 「マイク、驚いたわ。急に後ろから手が伸びてくるから」
 と言いながらも、彼女の口元が綻んだ。
 「ようやく裕子らしい笑顔を見ることが出来た」
 マイクは後ろから彼女を抱き寄せ包みこんだ。
 「裕子、君のお母さんは日本を離れられないか」
 「あなたのご両親がアメリカに戻ることを望まれているのと同じだわ」
 彼女は直ぐに答えを出した。
「別れたくないんだ。どうしても」
 「マイク、あなただけじゃない。私だって。」
 裕子が言い終わらないうちにマイクの唇が彼女の口を塞いだ。
 静かな時間に、堰を切ったような二人の心が溢れ出した。
 クリスマスパーティーは第一土曜日に催され他の講師達の配慮もあり、この日の主役を