時計ばかり見て時間の長さに苛立つこともある。
マイクはエドワードのような家庭を築きたくて裕子に結婚を申し込んだが、両親や兄は彼が帰国することを望み、来日した父親に話したが理解を得ることは出来なかった。
(裕子以外に僕は結婚したい人が現われるだろうか)
マイクは自問自答を繰り返していた。
十一月に入ると、マイクは受持ちクラスで帰国のことを生徒達に話し、彼等の動揺が暫く続いた。
裕子が危惧したように、生徒達から、彼女も英会話スクールを辞めアメリカに行くという噂が流れ始めていた。
直接、質問してくる生徒には、
「私を追い出すの?」
と一笑に伏し、明快な答えを避けた。
マイクの友人でもある柳井からは、それに関しての質問は一切なかった。
ただ、いつもなら誘ってくる授業終了後のファミリーレストランでのコーヒータイムに、裕子を誘うことはなくなった。
柳井が彼女の心を慮ってのことだった。
マイクは受持ちクラスや個人レッスンの送別会の予定が入り、彼の休日は埋められていった。
二人が通う合気道場でも、裕子は山岡先生から送別会の企画を持ち出されたが、彼女は上段者の方にお任せしますと答えた。
四人だけの職場である和歌山校では、マイクと二人きりになる時間があった。
わずか一ヶ月前までは、裕子はその時間を待ち遠しく思っていたが、今の彼女にとっては苦痛でしかなかった。
裕子は外国人講師が休憩する事務室にいる時間をなるべく減らし、受付けカウンターで仕事をするようになっていた。
カウンターで生徒達と雑談している僅かな時間、裕子の脳裏からマイクを消すことが出来た。
そんな彼女も、母親の前では平常心を保つように心がけていたが、殊更、マイクのことに触れてこない母を思うと、却って彼女の心の葛藤を感じた
マイクはエドワードのような家庭を築きたくて裕子に結婚を申し込んだが、両親や兄は彼が帰国することを望み、来日した父親に話したが理解を得ることは出来なかった。
(裕子以外に僕は結婚したい人が現われるだろうか)
マイクは自問自答を繰り返していた。
十一月に入ると、マイクは受持ちクラスで帰国のことを生徒達に話し、彼等の動揺が暫く続いた。
裕子が危惧したように、生徒達から、彼女も英会話スクールを辞めアメリカに行くという噂が流れ始めていた。
直接、質問してくる生徒には、
「私を追い出すの?」
と一笑に伏し、明快な答えを避けた。
マイクの友人でもある柳井からは、それに関しての質問は一切なかった。
ただ、いつもなら誘ってくる授業終了後のファミリーレストランでのコーヒータイムに、裕子を誘うことはなくなった。
柳井が彼女の心を慮ってのことだった。
マイクは受持ちクラスや個人レッスンの送別会の予定が入り、彼の休日は埋められていった。
二人が通う合気道場でも、裕子は山岡先生から送別会の企画を持ち出されたが、彼女は上段者の方にお任せしますと答えた。
四人だけの職場である和歌山校では、マイクと二人きりになる時間があった。
わずか一ヶ月前までは、裕子はその時間を待ち遠しく思っていたが、今の彼女にとっては苦痛でしかなかった。
裕子は外国人講師が休憩する事務室にいる時間をなるべく減らし、受付けカウンターで仕事をするようになっていた。
カウンターで生徒達と雑談している僅かな時間、裕子の脳裏からマイクを消すことが出来た。
そんな彼女も、母親の前では平常心を保つように心がけていたが、殊更、マイクのことに触れてこない母を思うと、却って彼女の心の葛藤を感じた
