「マイク、今日はオフなのにわざわざ来てくれて、ありがとう」
礼を言ってから、裕子は弁当に蓋をするとお茶を一口飲み、受付カウンターに出た。
マイクは裕子の傍に座り、受付カウンターを挟んで四十代半ばの女性と向き合う形になった。
裕子が名刺を渡し挨拶をしてから、パンフレットを広げ、受講内容を説明しようとすると、
「主人が個人レッスンを受けていますから、説明して頂かなくても分かっていますよ」
山木夫人はさも面倒と言うように、パンフレットを閉じた。
「お時間を取らせて申し訳ございません。会社の規則なので、説明させて頂かないと
いけないのです」
「私は良いと言っているのに。融通の利かない方ね」
裕子はまた、自分の生真面目さが相手を不愉快にさせてしまったことを後悔した。
が、契約内容でトラブルが発生したケースが過去にあった為、会社の方針で授業内容や授業料に関しては必ず説明の上、入学者に承諾してもらうように指示されていた。
山木夫人は、裕子が説明している間も彼女の視線はパンフレットから離れていたが、終了するまで口を挟むことはなかった。
「何かご質問はないですか」
裕子が山木夫人に問いかけるのを待っていたように、
「マイク先生に伝えていますが、ここで個人レッスンを受けたいので、勿論マイク先生にお願いします」
と一気に答えた。
「ご希望に添えると思います。夜はグループレッスンが入っていますから、昼間でしたら時間はお取りできます。曜日にご希望はありますか」」
「水曜日の午後なら、茶道の稽古で近くまできますから」
夫人が言うと、
「僕は大丈夫だから」
と彼は山木夫人と裕子の両方を見て言った。
入学手続きを終えると、マイクは夫人に入
礼を言ってから、裕子は弁当に蓋をするとお茶を一口飲み、受付カウンターに出た。
マイクは裕子の傍に座り、受付カウンターを挟んで四十代半ばの女性と向き合う形になった。
裕子が名刺を渡し挨拶をしてから、パンフレットを広げ、受講内容を説明しようとすると、
「主人が個人レッスンを受けていますから、説明して頂かなくても分かっていますよ」
山木夫人はさも面倒と言うように、パンフレットを閉じた。
「お時間を取らせて申し訳ございません。会社の規則なので、説明させて頂かないと
いけないのです」
「私は良いと言っているのに。融通の利かない方ね」
裕子はまた、自分の生真面目さが相手を不愉快にさせてしまったことを後悔した。
が、契約内容でトラブルが発生したケースが過去にあった為、会社の方針で授業内容や授業料に関しては必ず説明の上、入学者に承諾してもらうように指示されていた。
山木夫人は、裕子が説明している間も彼女の視線はパンフレットから離れていたが、終了するまで口を挟むことはなかった。
「何かご質問はないですか」
裕子が山木夫人に問いかけるのを待っていたように、
「マイク先生に伝えていますが、ここで個人レッスンを受けたいので、勿論マイク先生にお願いします」
と一気に答えた。
「ご希望に添えると思います。夜はグループレッスンが入っていますから、昼間でしたら時間はお取りできます。曜日にご希望はありますか」」
「水曜日の午後なら、茶道の稽古で近くまできますから」
夫人が言うと、
「僕は大丈夫だから」
と彼は山木夫人と裕子の両方を見て言った。
入学手続きを終えると、マイクは夫人に入
