と言うマイクの問いかけに、
 「マイクが美しすぎる-----」
 彼女は咄嗟に発した自分の言葉に顔を伏せた。
 「僕は裕子の長い真っ直ぐな黒髪が好きだ。どうして日本人は黒髪を大切にしないのか
と思う」
 お世辞であっても裕子は嬉しいと思った。
 最近は茶髪に染めている小学生を見かけるが、英会話スクールの生徒の多くも黒髪でないことに裕子は不思議に思っていた。
 彼女は国際線キャビンアテンダントとして多くの国を訪れたが、英語が氾濫し、黒髪を茶髪に染める日本という国、人に寂しさを感じていた。
「ところで、マイクは和歌山城をどんな風に感じた」
 「いや、まだ行ってないよ。生徒達から個人的に誘われたけど行く機会がなくてね」
 「意外だったわ。一番先に観光していると思っていた」
 「よく色々なところに誘われるけどね。彼等は僕にとって生徒だから、個人的に付き合ってトラブルになりたくなかった」
 マイクの姿勢は外国人講師として賢明であった。
裕子は、嘗て外国人講師が生徒と個人的に付き合いトラブルになったケースがあり、彼等と契約を結ぶ時、会社に迷惑をかけないことを条件に採用していると入社教育で聞かされていた。
「和歌山城の西の丸庭園、紅葉渓も静かで落ち着くから一度行ってみたら良いわ。抹茶を頂くことが出きるのよ」
 「裕子、一緒に行かないか」
 「えっ、私と?」
 「そうだよ」
 裕子は返事を焦るあまり、
 「マイク、ガールフレンドと行かないの」
 と言ってしまった。
 「いないよ」
 マイクは答えてから再び窓の方に顔を向け、気まずい空気を裕子は感じた。
 「ごめんなさい。マイクは皆に人気があるし、和歌山に来て二年にもなるから特別なガ