があり、裕子が扉を開けると既に練習が始まっていた。
裕子の姿を見つけ山岡先生が近づいて来た。
「裕子ちゃん、久しぶりやね。和歌山で就職したとは叔父さんから聞いてたけど。なかなか現れんで心配してたんや」
「落ち着いてから来させてもらうつもりでしたが、今日になってしまいました」
「そんなこと気にせんと。叔父さんも海外駐在員になったからしばらくは来れないから裕子ちゃんも寂しいだろうけど、来たい時においで。それでいいんや」
「ありがとうございます。これからはなるべく来させてもらいます」
裕子は山岡先生に礼を言ってから、更衣室に入り、白の道衣を着て袴をはき長い髪を束ねた。
支度を整えた裕子が更衣室を出た時、
「あっ!」
と声を上げた。
道場の入り口でナップサックを肩にかけ、山岡先生と話している外国人を見たとき、裕子は今にも心臓の鼓動が止まるのではないかと思った。
彼女は駆け寄っていきたい衝動に駆られたが、視界に止めただけで、道場の中心に祭られている神棚に手を合わせ、右手に掲げられた合気道開祖、植芝盛平翁先生の写真に一礼してから準備運動を始めた。
(無にならないと。私は合気道の稽古に来ているのだから)
彼女は自分自身に言い聞かせようとするが、頬が紅潮していくのを抑えることが出来なかった。
空間に無理やり焦点を合わせ準備運動をしていた裕子は、近づいてくるマイクの気配を身体で感じていた。
彼女の準備運動が終わると、
「裕子じゃないか、驚いたよ」
マイクは屈託のない笑顔で彼女の前に立った。
「こんな場所で会うなんて、マイクも合気道の稽古に来たの」
裕子は弾んだ声で聞いた。
「日曜日はほとんど道場に来ているよ。僕
裕子の姿を見つけ山岡先生が近づいて来た。
「裕子ちゃん、久しぶりやね。和歌山で就職したとは叔父さんから聞いてたけど。なかなか現れんで心配してたんや」
「落ち着いてから来させてもらうつもりでしたが、今日になってしまいました」
「そんなこと気にせんと。叔父さんも海外駐在員になったからしばらくは来れないから裕子ちゃんも寂しいだろうけど、来たい時においで。それでいいんや」
「ありがとうございます。これからはなるべく来させてもらいます」
裕子は山岡先生に礼を言ってから、更衣室に入り、白の道衣を着て袴をはき長い髪を束ねた。
支度を整えた裕子が更衣室を出た時、
「あっ!」
と声を上げた。
道場の入り口でナップサックを肩にかけ、山岡先生と話している外国人を見たとき、裕子は今にも心臓の鼓動が止まるのではないかと思った。
彼女は駆け寄っていきたい衝動に駆られたが、視界に止めただけで、道場の中心に祭られている神棚に手を合わせ、右手に掲げられた合気道開祖、植芝盛平翁先生の写真に一礼してから準備運動を始めた。
(無にならないと。私は合気道の稽古に来ているのだから)
彼女は自分自身に言い聞かせようとするが、頬が紅潮していくのを抑えることが出来なかった。
空間に無理やり焦点を合わせ準備運動をしていた裕子は、近づいてくるマイクの気配を身体で感じていた。
彼女の準備運動が終わると、
「裕子じゃないか、驚いたよ」
マイクは屈託のない笑顔で彼女の前に立った。
「こんな場所で会うなんて、マイクも合気道の稽古に来たの」
裕子は弾んだ声で聞いた。
「日曜日はほとんど道場に来ているよ。僕
