柳井の言葉に押されるように周囲も乾の顔を覗き込んだ。
「ほらほら、そんなに乾さんを苛めないで。母から頼まれていた薬について教えてもら
っていたの。柳井さん、この間ミニスカート
が良く似合う足の綺麗な女性とデートしてい
たでしょ?」
「えっ、違いますよ。彼女はですね-----」
今度は柳井がうろたえ始めた。
周囲の好奇心は柳井に向けられ、彼は早々に席を立ち教室に向かった。
「ありがとう」
と乾は言い残して立ち去った。
裕子は今日、年度末の決算報告書と三月分の送金を本部に送り終えたことで、虚脱感に似たようなものを感じていた。
彼女は定刻の八時には帰宅の途に付いた。
三月に入り、毎日が残業で母親ともゆっくり話す時間がなく、今日は早めに帰り夕食を一緒にしようと家に電話を入れておいた。
裕子が自宅の門を入ると、台所とリビングから煌煌と灯りが漏れ、娘を待ちわびている母親の嬉々とした姿が映るようだった。
玄関のドアーの開ける音で、
「裕子、お帰り」
と母親の弾んだ声が台所から聞こえてきた。
裕子が洗面所で手を洗っていると、
「丁度お鍋が良い頃なのよ。もうそろそろ帰ってくる頃だと思っていたの」
と母親は菜箸を持ったまま台所から顔を出した。
裕子が台所に入っていくと、食卓には土鍋から湯気が漏れていた。
「嵯峨野のお豆腐を頂いたので湯豆腐にしたのよ。きっと美味しいわよ」
「そうね。楽しみだわ。ねぇ、早く食べよう。もうお腹ぺこぺこよ」
裕子は電気コンロのスイッチを入れ、土鍋の蓋を取った。
久しぶりに二人で食べる夕食に、母も箸が進み、饒舌だった
その夜、彼女は早めにベッドに入ったが、
「裕子、乾さんって人から電話よ」
と言う母の声で再び階下に降りていった。
「もしもし、裕子ですが、何かありました
「ほらほら、そんなに乾さんを苛めないで。母から頼まれていた薬について教えてもら
っていたの。柳井さん、この間ミニスカート
が良く似合う足の綺麗な女性とデートしてい
たでしょ?」
「えっ、違いますよ。彼女はですね-----」
今度は柳井がうろたえ始めた。
周囲の好奇心は柳井に向けられ、彼は早々に席を立ち教室に向かった。
「ありがとう」
と乾は言い残して立ち去った。
裕子は今日、年度末の決算報告書と三月分の送金を本部に送り終えたことで、虚脱感に似たようなものを感じていた。
彼女は定刻の八時には帰宅の途に付いた。
三月に入り、毎日が残業で母親ともゆっくり話す時間がなく、今日は早めに帰り夕食を一緒にしようと家に電話を入れておいた。
裕子が自宅の門を入ると、台所とリビングから煌煌と灯りが漏れ、娘を待ちわびている母親の嬉々とした姿が映るようだった。
玄関のドアーの開ける音で、
「裕子、お帰り」
と母親の弾んだ声が台所から聞こえてきた。
裕子が洗面所で手を洗っていると、
「丁度お鍋が良い頃なのよ。もうそろそろ帰ってくる頃だと思っていたの」
と母親は菜箸を持ったまま台所から顔を出した。
裕子が台所に入っていくと、食卓には土鍋から湯気が漏れていた。
「嵯峨野のお豆腐を頂いたので湯豆腐にしたのよ。きっと美味しいわよ」
「そうね。楽しみだわ。ねぇ、早く食べよう。もうお腹ぺこぺこよ」
裕子は電気コンロのスイッチを入れ、土鍋の蓋を取った。
久しぶりに二人で食べる夕食に、母も箸が進み、饒舌だった
その夜、彼女は早めにベッドに入ったが、
「裕子、乾さんって人から電話よ」
と言う母の声で再び階下に降りていった。
「もしもし、裕子ですが、何かありました
