らのことを病院の先生は小間使いにしか思っていない。だから、せめて英会話はネイティブスピーカーになろうと思ってるんです」
 鬱積していたものを吐き出すように話す乾に、裕子はかける言葉が見つからなかった。
 彼は冷めかけたコーヒーを飲み干すと、
 「平沼さん、すみませんでした」
 と頭を下げた。
 「うまく言えないけど---最低限---自分の誇りを捨ててはいけないと思うわ」
 裕子は自分自身に言い聞かせるように呟いた。
 「そうですよね」
乾も大きく頷いた。
 「そうそう、乾さんのお母様も出品されている日本画展、予定が入らなければ日曜日に行かせてもらいます」
 裕子が告げると、
 「僕も朝から会場に行ってますから。待っています」
 ようやく笑顔を取り戻し、
 「コーヒーごちそうさま。美味しかった」
 と言って帰って行った。
 裕子は乾の後姿を見送りながら、真摯に生きる難しさを感じていた。
 最近では週休ニ日制の企業が多くなってきているが、裕子が勤める英会話スクールの休みは日曜、祝日だけで、まとまった休暇はお盆と年末年始に限られていた。
マネージャー一人では年休さえも利用出来ず、日曜日はのんびりと家で過ごすことが多かった。
「裕子、眠っているところを悪いけど布団を干したいから起きて」
母親の声で彼女は朝のまどろみから目覚めつつあった。
「今日、酒屋のおばさん達とホテルのランチに行くんだけど」
「いいじゃない。母さんが楽しいと天国の父さんも喜んでいるわよ」
「裕子は?」
「私も生徒さんから日本画展の案内状を貰ったから行ってくるわ」
裕子は言い終わるとベッドから跳ね起きて、カーテン越しに入ってくる朝日に向かって大