た」
 「それは私も同感だわ」
 ようやく乾との会話が弾むようになり、裕子は安堵し、温かいオニオンスープが心の疲れを溶かしてくれるようだった。
 二人は食事を終えると早めに切り上げ、タクシーで乾は裕子を自宅まで送った。
 クリスマスパーティーが過ぎると、英会話スクールは落ち着きを取り戻したが、生徒達は師走の慌しさに追われ欠席が目立っていた。
 裕子は仕事納めの二十八日までに本部に提出する月報の作成が終了すると、スクールの掃除に取り掛かった。
 仕事納めの日、流石に昼間の主婦クラスは殆どの生徒が欠席して、担当しているパトリシアも、
 「今日は喫茶店でレッスンしてくる」
 と言って、出席した二人の生徒と一緒に
出かけた。
 夜になると、受付ロビーはいつもの賑わいはなかったが、
 「お正月は何処かに出かけるんですか」
 という生徒達の問いかけに、
 「母と二人で静かに過ごします」
 と裕子は同じ答えを繰り返した。
 八時に始まる最終クラスの生徒達が教室に入ると、受付ロビーは静けさを取り戻した。       
裕子は年末年始のための留守番電話のアナウンスを入れてから帰宅の途についた。
 
 「さぁ、今日から忙しいわよ。早く起きて」
母親の弾むような声で裕子は目が覚めた。
 「休みだから、もう少し寝かせて」
 「何に言ってるの。休みになるのを待っていたのよ。今日は大掃除だからね」
 母親は今にも裕子の布団を剥ぎ取る勢いだった。
 裕子が着替える間も、傍で喋ることを止めない母親に、仕事であっても帰宅の遅い娘を待ちながら寂しさを募らせていたのか、と彼女は思った。
裕子は改めて母親が幸せになる結婚をしなくてはいけない、と痛感した。
 父親が他界して迎える初めての正月、しめ縄や鏡餅は控えたが、父親が好きだったおせ