大阪本部からはパーティーで得た収益を特別送金として終了後送金するように指示が来たが、彼女は全てを生徒達のために使おうと思っていた。
その事で非難された時は、退職するつもりでいた。
 裕子は連日クリスマスパーティーの準備に追われ、中でも景品購入には頭を悩ませた。
 出来れば参加者全員に行き渡るような配慮をしたかった。
 第二土曜日は瞬く間にやってきた。
 パーティーは午後七時からだが、裕子は六時に出かけホテルのスタッフに挨拶をしてから、前もって運んでおいた景品や受付の備品を点検した。
六時半になると裕子は受付けで生徒達の対応に忙殺された。
 七時丁度になったので、彼女は受付のテーブルに用意していた案内を書いた大きな紙をテープで止めてから会場に入った。
 彼女はマイクを片手にプログラムを進めながら、入り口には絶えず目をやり、遅れて入ってくる生徒の名前を呼んでは、彼等の気持ち高揚させていった。
 パーティーの後半三十分はダンスの時間に当てていたが、外国人講師には前もって、特に普段おとなしい生徒達をダンスに誘って欲しい旨を伝えていた。
最初は戸惑いながらフロア‐に出た女性達であったが、マイクやエドワードのリードに身体を委ね、曲が終わっても離れがたい様子であった。
ニ曲目が始まると一気にカップルが増えダンスの輪が広がった。
 裕子は楽しそうに踊る彼等を見ていると、航空会社に勤務していた頃を思い出していた。   
 競うように女性達は華やかなドレスに身を包み、都内の一流ホテルで開かれるクリスマスパーティーは心の贅沢を味わうことが出来た。
 嘗て無かったダンスの時間を組み込んだ案内状を見て、若い女性達は驚きと期待を持ったようだった。
が、今、フロア‐で踊る彼等を見て裕子は満足していた。