俺が日本という国のある異世界へとやってきたことには理由がある。
 理由なければこんな世界になんて来たくもなかった。
 その理由ってのなんだか今からこの世界で言うところの一月ほど前まで遡ることになる。


「お前たちには、この玉座に相応しいかどうかを見極めるテストを受けてもらう」
 無駄にだだっ広い、謁見の間で俺たちの父。シルバスタ王が厳かに告げる。
――なんだテストって?
 父と言っても王。
 肉親であり上司でもあるその王の言葉には逆らうことは許されないが、問う事は許されるだろう。
 俺は玉座から応接間の扉までまっすぐ伸びた赤い絨毯の上で下げていた頭をゆっくりと上げて「恐れながら」と前置きをし、テストの意味を問いかけた。
「お前たちには足りないものがある。それを見つけこの国に帰ってくることがテストの内容となる」
 王の言葉に隣に同じ姿勢で並ぶ弟が「足りないもの……」と呟いた。その声音から何が足りないかを考えてるようだ。
 そんな弟を見て、俺は小さく息を吐く。
 そうだな、お前には分からないだろうな。