差し出されたリボンを乱暴に引ったくったキティは迷わずブーツの上からリボンを結んだ。

「えぇ~?なんで足なんスか!」

「決まってるじゃないか、リボンを盗ろうとするアンタの手を踏みやすいようにさ」

「えぇー……頭につけるとかすればいいのに…ほら、シュリーちゃんみたいに。いつも可愛いのつけてんじゃないスか、あの子」

「あれはリボンじゃなくてシュリーが可愛いんだよ」

「あー、ハイハイ。そうでしたそうでした」

 無駄口を叩きながらも二の腕にキレイな蝶々結びをつくった若造は先程までのおちゃらけた態度をしまって顔つきが変わった。

 つーか、シュリーって誰だ。聞いてる限りじゃ女らしいから、まあよしとしとくか?

「あ、重要なこと、言い忘れてました」

「サッサと言いな。サッサと終わらせたいんだ」

「姐さんは一丁銃ってことで、お願いしたいんスよね~」

「十分だ。始めるよ」

「んじゃ、ファイ!」

 おいおい、マジかよ。

 すんなりとハンデを了承したキティを見る。自信があるってことなのか、目は合わない。

 キティの腕は認める。だがガキとはいえ敵は男だ。接近戦になりゃあ不利かもしれねぇ。

 これは赤いガキのノーコンっぷりに期待するしかねぇな。

 何度目の銃声だろうか。一発もあたらない弾はキティが避けるまでもない。ガキが弾をこめなおす間にキティは間合いをつめていく。

「あー、くそっ」

 そりゃ、悪態つきたくもなるだろうよ。

 ちなみにキティは、まだ一発も撃っちゃいない。

 二の腕のリボンにのびかけた手はさすがに振り払われた。すかさず反対側の脇腹に蹴りがとぶが、それもかわされてしまっている。

 なんで銃、使わねぇんだよ。

 舌打ちをうつと隣に居る色男は呆れ顔で溜め息をついた。

「"遊んでる"んだろ」

 わかってたって焦れるもんだ。銃さえ使やあ、あっという間に勝負はつく。そりじゃあ、つまんねぇーってことなんだろ。だからって、わざわざ接近戦に持ち込まなくったって…。

 そうこうしているうちに敵の弾ごめは終わってしまった。いくらノーコンだからって、この距離なら確実にあたるだろう。

 赤い髪の下で目が細められるのが、見えた。

「キティ!」