正直、ガキだからって嘗めていた。


『そういやオッサン、昨日の夜、飲みに行ってたんじゃねぇの?』

 お互いの身の上話が済んだあと、ルーイがそう訊いてきた。純粋な疑問じゃない、目には明らかに疑いの色が浮かんでいた。

 そうだ、と応えれば少し間をあけて何も応えない。口を開いたかと思えば探るような目つきで俺を見る。"ふーん"と、全く納得していない様子で。

『飲みに行ったにしては酒の匂いがしねぇなあって思って。あんた相当な量かっくらいそうだからさ、』

『そういうお前は酒弱そうだな』

『呑むかよ、未成年だし。そっちこそ、どうなんだよ。どうせ呑みたがりのくせしてすぐ酔うんだろ?』

『んなわけねぇだろ。ザルだ、ザル』

『嘘つけ』

 ハッ、とクソ生意気な笑い方をしたかと思えばコロリと表情を変えて"イッシュは下戸って感じ"、とニヤニヤしだした。

 わかりやすいようでいて掴めねぇガキだな。

 実を言えば俺は昨晩、呑みになど行っていなかった。今まで世話になっていた住まいを片すために宿をでていたのだ。そこはワクスじぃさんが用意してくれた居場所であり、じぃさんやキティをあげたこともある場所だった。

 名残惜しいっちゃあ惜しいが生きて、また此処に帰ってこれるとも限らない。

 一年ぽっち喜んでくれてやる。寧ろ足りねぇくらいだ。

 今よりもっと小さな背中が頭の中に浮かぶ。

 あの頃は、もっと髪が長かった。