vivid

「さっきも言ったと思うけど、ヘーカを殺す権利を手に入れるためには一年以内に世界を一周して"ある条件"を満たさなきゃならない。その条件っていうのはアタシたちが今居るイエローを含む中立地帯の大きな街、マゼンタ、シアンの三つと、レッド、ブルー、グリーン、そしてブラックの四つの国に送りこまれてくる、ヘーカの刺客を倒すことなんだよ」

「じゃあ、その刺客というのが"グレイ師団"の人間、ということか」

「これだから察しのいい子はすきだよ。その通りだ、イッシュ」

「……へぇ、"すき"だってよ、色男」

「よかったな、イッシュ。ついでに言っとくと顔赤い」

「な…っ、いいから話を進めてくれ…!」

 からかわれると、わかっているのに顔が熱くなることは自分でどうにかしようにもどうにもならない。

 キティに遊ばれているということもわかってる。この女に俺が特別な感情を抱くことは何が起こってもありえない、逆も然りだ。ただ言われ慣れない言葉を、ああもストレートに言われてしまうと条件反射的に顔が赤くなってしまうのだ。

 "からかい甲斐のある男もすきだよ"と、クスクス笑うキティにリグレイが話の先を促した。そして俺の方を一瞬だけ睨む。

 嫉妬しているのだとしたら、とんだ見当違いだ。勘弁してほしい。

「さて、話を戻すと……"グレイ師団"っていうのはねぇ、ヘーカお抱えの軍隊さ。クールグレイ隊、トナーグレイ隊、ナチュラルグレイ隊、ウォームグレイ隊の四つの大きな隊があって、各隊は更に十の部隊に別れている」

「……"シュリー"と名乗った女は、その"ウォームグレイ隊"という隊の隊員だったのか?」

 見た目に似合わない武器を扱うあの女を思い出す。容姿だけで判断するなら、とても軍人には見えなかった。

「ああ、アンタはシュリーを見たんだっけねぇ。あの子はウォームグレイの0番部隊隊長さ。ウォームグレイの中じゃあ最弱だけど、あれでも一応、幹部だよ」

「隊は階級別に仕切られているのか」

「そうさね。強い順に言うとウォーム、ナチュラル、トナー、クールだ。部隊番号は数字が大きいほど強い。刺客として送られてくるのは、いずれかの部隊の隊長クラスだろうね」

「って、ことは、強いん…だよな?」

 ルーイが歯切れの悪い声で問う。本人は無意識でやっているのだろうが、手が短剣のあるホルダーの位置まで伸びていた。