vivid

「は……?」

 ルーイと俺の声が重なった。

 先代国王の娘、ということはキティがイコールで王女、ということになる。

 まさかとは思っていたが本当に王の血族だったなんて…。

 実を言えば、王族は王族でも遠い親戚とか王族ではなくその近臣なのではないか、くらいにしか思っていなかった。

 "王女様"が拳銃を装備してフラフラと出歩いているだなんて聞いたことがない。

「でも、当代国王の部下ってことは…」

「ああ、アタシの両親は十年前に殺されてる。当代国王ヘーカにね」

 自分の親のことだというのに、やはり感情のにじまない声。

 復讐、か。

 声にこそ出さなかったが俺は勝手に納得した。

 キティは自分は"黒"だと言った。もしそれが本当なら一年後、"オオカミ計画"が実行されてもキティが殺されることはない。それでも当代国王に持ちかけられたという賭けに乗ったということは、つまりそういうことなのだろう。

「あ、その……ごめん」

「謝る必要はないよ。湿っぽいのは嫌いでね。気が済んだなら二つ目の質問に移ってもらえると有り難いよ」

 キティは肩を落とすルーイにヒラヒラと手を振った。本当に気にしている様子はない。

「えっと…じゃあ二つ目、オレがあんたの仲間になったとして、ホントにオレの記憶は戻るのかどうか」

 ルーイが立てた人差し指と中指をキティが掴む。

 反射的に身を引いたルーイとは逆に掴んだ指を自分の方へと引き寄せようとするもんだから端から見ているとルーイが不憫でならない。

 なぜ突然、意味不明な行動とるのか、本当にこの女には理解に苦しむ。

 理解できるようになりたいとも思わないが、と思いつつ、俺は腕を組んだまま動かないリグレイを横目に見た。

「よーくお聴き、ルーイ。前にも言ったはずだよ、アタシについてきたところでアンタの記憶が絶対に戻るとは限らない。あくまで可能性の話だ。いいかい?賭けるものは命だ、ただの"可能性"にアンタは自分の命を賭けられるのかい?」

「……命賭けるとか賭けないとか、そんな大それた言い方されるとアレだけどさ、世界一周するんだろ?だったら色々見てまわる間に何か思い出すかもしれないし、親のこと知ってる人に会えるかもしれないし…まあ親の名前すら知らないんだけどさ。でも"可能性"はゼロじゃねーってオレは思うから、オレはソレに賭けてみたい」