「最後に三つ目、一年の間アタシは殺されることはないが"仲間"になった人間には殺される可能性が十分にある」

「話は、それだけか」

 ルーイが思案顔をする隣で、リグレイは躊躇いのない声を発した。

「"あのとき"お前が俺を助けてなけりゃあとうになかった命だ。答えは変わらない、俺はお前に"協力"する」

「……そう言うと思ったよ」

「お前らは、どうする」

 "あのとき"って、なんだ?と疑問に思ったのも束の間、リグレイがルーイと俺に答えを急かした。

 まだ幾つか訊きたいことはあるが、すでに俺の答えは決まっている。

 問題はルーイだ。

 彼は、まだ子どもだ。子ども、と言っても実際には俺の四つか五つ下くらいだとは思うが、どっちにしろ、きっとルーイはまだ戦いを知らない。少なくとも人を斬ったことはないであろうと思う。そんな少年に"命を賭けろ"と言うことは、あまりに酷である。

 ルーイに向けて視線をやると思案顔を引っ込めて頷いて見せた。

 俺が心配してやるまでもないか。

 イエローまでの道中で初めてあったときには、キティについてくるかと問われたとき、ルーイは不安げな表情を俺に向けた。だが今の表情には不安の欠片も感じない。

 頷き返すとルーイは一瞬だけ、うっすらと笑ってからキティに視線を向けた。

「オレが、あんたの"仲間"になるかどうか決める前に二つ訊きたいことがあるんだけど」

「構わないよ」

 キティは待ってました、とでも言いたげな様子でルーイの方に体を向け頬杖をついた。

「じゃあ一つ目、あんたさっきっから"陛下"とか"変態野郎"がどうだのとか言ってるけどさ、なんで"陛下"?イッシュからもちょっとだけ聞いたけど、もしかしてあんた、王室の人間なの?」

 現時点で俺が訊きたいことは三つ。そのうちの一つをルーイが今、訊いてくれた。

 リグレイは二つ返事で"協力"すると言った。キティとは古くからの知り合い、といった風ではあるし、この女の素性については疑問に思うところがないのだろう、我関せずといった様子で再び腕を組んだ。

「王室の人間か、ねぇ?半分はイエスで半分はノーかね」

「いや、どっち。なんでそんな曖昧なこと言うんだよ」

「アタシが先代国王の娘で、当代国王の直属の部下だからさ」