「まず一つ目、アンタがワクスの孫だってのは本当かい?」

「……たぶん」

「"たぶん"?パッとしないねぇ。それじゃあ"答え"たことにはならないよ」

「育ての親は間違いなくジィちゃ…ワクスだけど正直、血ぃ繋がってんのかどうかもわかんなかったし。まあ一応、ワクスの孫として育ったから、たぶん孫かな」

「そうかい…まあ、よしとしよう。二つ目だ、このネックレスに見覚えはないかい?ボウヤ」

「あ……」

 思わず声が漏れた。

 握られた手のひらから、まるで手品のように現れたのはオレがジィちゃんに貰ったネックレスと同じ形のものだったからだ。

 ひとつだけ違うのは、色。オレのは白で"キティ"のは黒。

 首に下げていたそれを服の中から出すと"キティ"は自分の持っているものを近づけてオレのものにくっつけた。

「え、うそ」

 白と黒のネックレスのトップはピッタリと重なってハート型になった。

 だから変な形だったのか、と驚く反面、納得した。

 オレの反応に満足したのかキティはネックレスをしまって目を細めた。

「これはワクスに貰ったものでねぇ、肌身はなさず持ち歩いているのさ。昔、よく世話になったもんだよ」

「そう、なんだ」

「信用したかい?」

 バレてたのか、オレが疑ってること。

 油断のならない女のようだけど、なぜかもう、こいつはキティじゃないんじゃないか、と疑う気にはなれなかった。

 ジィちゃんの、ワクスと名前を呼びぶときの声は、なんだか優しい響きがあるように思えた。

 だからこそ、伝えておかなきゃならないと、そう思った。

「死んだよ」

「"死んだ"?」

「ジィちゃんは、ワクスは、死んだんだ」

 キティは目を見開いて、それから顔を歪めた。泣きそうにも見えた。
 やや後ろに立っていた、イッシュと名乗った男が察したのか、そっと肩に触れると我にかえったようにハッとしたような顔をして無表情へと戻っていった。

「そうかい……ワクスが」

「七十前半だった。年のわりに老けて見えたから、たぶん若い頃、苦労したんだろうな」

「ああ、そうだね。随分、随分と苦労をかけてしまったよ」

 服の下にしまわれたネックレスを握るようにするとキティも同じようにしていた。

 こいつはジィちゃんの、なんだったんだろう。

 見られていることに気づいてパッと手を離す。まだ、この疑問を口にするには早い気がした。