(イッシュ視点)


 忘れもしない、忘れられるはずがない。
 右目の下のカラーコード、色はもちろん黒だった。

 黒い涙のようにも見えるそれを持った男は最初に"家族だけは"と懇願した父を斬った。次に"子どもだけでも"と泣き叫んだ母を斬った。

 次は、俺だ。

 そのあとのことは、よく覚えていない。男の腰に下がった、もう一本の剣を抜いて俺は男に斬りかかった。そして男は動かなくなった。

 覚えているのは、それだけだ。これ以上は思い出したくても思い出せない。