角度を変えて、何度も、何度も。



とろけそうな感覚に陥った唇を、少々名残惜しく感じながらゆっくり離す。


夢のような現実の余韻に包まれ、思わずそれを噛み締めた。




「風邪ひく前に戻りましょうか、保健室」



冷たい木枯らしに晒されて冷えた手が、温かい先生の手に包まれる。


大人の余裕か、性格か。

照れること無く、彼は柔らかい笑顔をわたしに向けて。




「志衣奈さん」





ホッとする愛しい声で、名前を呼んだ。





fin.