「ひっでェ!じゃあ、千尋ちゃんは何やってたの?」

「しがない普通のサラリーマン」

その間髪入れない俺の答えに、藤谷は《ふ~ん》と気の抜けた返事を返す。

「疑っているな?」

「……さっきの言葉を、そのまま千尋ちゃんに返すよ」

そう言って藤谷は困った様に笑うと、それからそっと【マーク】を見つめた。

「さ、もうすぐゲームテーブルだ。暗くなる前にさっさと行こう」

その藤谷の言葉にコクリと頷いて返すと、二人で森の奥へと向かって歩き出す。

しかし誰かの嘲笑う様な声が聞こえた気がしてそっと後ろを振り返ると、白い小さな塊に微かに交じる淡い《赤》が……悲しく見えた様な気がした。