「……シッ!誰かいる」 急に藤谷が呟き、歩く俺の腕を引き、身を屈めた。 それと同じ様に地面にしゃがみ込むと、草木の影からそっと藤谷の視線の先を辿る。 そこに居たのは……一人の女だった。 茶色の少し痛んだ髪の女は、雪の上に座り込み、ブツブツと何かを呟いている。 何処かから微かに吹く風で揺れる木々の囁きでその声は掻き消され、よく聞こえない。 しかしほんの一瞬、風が凪ぎ、女の声が耳に届いた。