「でも、君は望むんでしょ?本当の《結末》を」

その無邪気な問い掛けに小さく頷いて答えると、少年は嬉しい様な、悲しい様な複雑な顔をして笑った。

「じゃ、カードを集めないと。君が望むのは【ファイブ・オブ・ア・カインド】……報酬は《記憶を残して外の世界に出られる》」

俺が手にしているカードは《スペードのJ》《クラブのJ》《ダイヤのJ》そして《Joker》のカード。

そう……《ハートのJ》さえあれば、【ファイブ・オブ・ア・カインド】が揃う。

「もしも揃えられたら、ご褒美をあげなきゃね。そうだな……君の知りたい、この世界の全てを教えてあげるよ。君が納得できるようなモノではないと思うけどね。それともう一つ、僕からとっておきのプレゼントをあげる」

「どうして俺に……」

「それは君が役を揃えられたらのお楽しみだ。主人公は幾多の試練を、そして消えて行く脇役達の屍を乗り越えて……突き進まなければならない。それが決して変える事の出来ない《運命》という名の、絶対的な《物語》」

その少年の言葉と共に、突然辺りの景色が揺らめき始める。

そして辺りは静かに闇に包まれ、何も見えなくなる。

「残るは《ハートのJ》……《彼女》が待ってるから、特別にそこに送ってあげる。これは僕からのせめてものお礼だよ。逃げずに突き進んで来た……君へのね」

そんな囁きが聞こえた瞬間、辺りに淡い光が灯り……そして《小さな人影》が見えた。