「どう…して……?」

擦れた声で黒咲さんは呟き、自分の胸にそっと手を当てている。

その彼女の手が押さえる胸元からは、真っ赤な血が溢れ出ていた。

次の瞬間、彼女の口からも血が流れ、黒咲さんは困った様に笑って見せる。

「……ホント……私って……ツイて……ない」

そう言って黒咲さんはクスリと笑うと、そのままコンクリートの地面に崩れ落ちた。

すると彼女の立っていたその先に、灰色の影が見える。

それはこちらへ向けて真っ直ぐに銃を構えている、一人の男。

「……ジョーカー」

そう小さく彼を呼ぶと、ジョーカーはフラフラと重たそうに身体を揺らしながら、こちらに向かって歩いてきた。

それと共に彼の周りをフワフワと覚束ない羽ばたきで飛んでいる……コウモリが見える。

「お前!!」

そう叫んでコウモリへと向かって走り寄ると、コウモリはお得意の不敵な笑みを浮かべて見せた。

「ほらほら、まだ終わってねェぞ……こっからがクライマックスだ」

それだけ言ってコウモリは俺の手の上にポトッと落ちる。

すると月明かりで照らされたコウモリの身体は傷だらけで、まるでボロボロのぬいぐるみの様に見えた。

「おい、大丈夫……」

そこまで言って、思わず言葉を失った。

何故ならフラフラと近付いてきたジョーカーの方が、更に悲惨な状態だったから。