「俺が……ジョーカーだったんだ。ジョーカーのカードはどんなマークにも数字にもなる最強のカード。何よりも有利なカードだ」

そう言って藤谷は掴んでいた俺に手に、一枚のカードを握らせた。

それは血に濡れた《Joker》のカード。

「ジョーカーのカードは、ジョーカーを《殺した者》に受け継がれる。二枚目の《命のカード》として」

その藤谷の言葉に、俺はただ愕然とした。

何故ならそれは、この先に藤谷が語るであろう残酷な決断を、すでに俺に気付かせてしまったから。

「俺を……殺せ」

分かっていた藤谷その言葉に、俺はただ彼を見つめる事しか出来なかった。

「俺はもう助からない。このまま俺が死ねば、セリルの用意した《偶像》がジョーカーとして復活する」

「……偶像?」

「そうだ。ジョーカーは普通のプレイヤーと違う。セリルの用意した殺人マシーンみたいなもんだ。そいつはプレイヤーの《一番大切なモノ》の姿をしている。恋人や家族や親友……そんな姿をして襲ってくるんだ。だからどんなプレイヤーでも、ジョーカーを相手にすると怯んでしまう。……一番厄介な存在」

そこまで言って藤谷はゴホゴホと激しく噎せ、大量の血を吐いた。

しかし藤谷はそんな事を気に留める様子も無く、腕で無造作に血を拭い話し続ける。